前回は作業ついでのキャリパーOHを実施しました。

今回はついでにメッシュホース化した上でエア抜きを実施します。
必要なパーツ類
- ブレーキフルード: 大抵はDOT4だと思いますので要確認。とはいえDOT3指定ならDOT4入れて問題ないです。DOT4はコスパ最強なホンダのこれでいいでしょう。
- アルミワッシャー: 締付時に潰れることで密着し、フルードの漏れを防ぎます。要確認だけど内径10mmのものを買っておけばいいかと。
- エア抜きツール: こういうの
メッシュホースに交換
エア抜きだけを見たい人は、ここをすっ飛ばしてここをクリックして下さい。
メッシュホースとは
テフロンホースの外側をステンレスやアルミの網(メッシュ)で包み込んだホースです。
ノーマルで装着されているゴム製ホースは、ブレーキをかけると圧力がかかって内側から膨らみ、ブレーキの操作に影響をあたえます。それを最小化するためにメッシュホースへ交換します。
ブレーキの感触がイマイチと思ってる人は、入れ替えてみてはいかがでしょうか。
ステンレスとアルミ
メッシュホースの材質はステンレスとアルミが存在します。後者は略してステンメッシュと呼んだりします。
どちらが高いかというとステンですが、普通に使うのであればステン一択です。何故かというとアルミは経年劣化や腐食で割れたりするからです。
生命に直結する箇所ですので、安いとか色がカッコイイという理由で安易にアルミを選ばない方がいいと思います。
メッシュホースに必要なパーツ
車種専用のものといった、最初からバンジョーアダプターが取り付けられているものを買えばいいのですが、今回は大昔の2りんかんのアウトレットで入手したbuildlineのステンメッシュ(1千円)を使います。買った後に見てみたらER-5にちょうどいい長さだったんですよね。
そのほかに必要なのは、ホースの両端に取り付けるバンジョーアダプターです。これは角度が数種類ありますので、事前にノーマルホースのバンジョー部の角度を見てから選んで下さい。ショップに任せればこの辺もやってくれるので、自信がない人は素直にショップにお願いしましょう。
ちなみにバンジョーアダプターは専用品と思って下さい。安いからと適当に買うと取り付けられず、金をドブに捨てることになります。困ったことにbuildlineのバンジョーアダプターは1個1,500円くらいするのですが、ここは仕方ないので諦めます。しかしホースより高いなんて…
メッシュホースの組み付け
そしてホースとバンジョーアダプターの装着です。
buildlineのマニュアルを読むと、バンジョーアダプターのネジ山にモリブデングリスを塗るよう指定されていますので、塗って手で仮締めします。
ノーマルホースをフルードを車体に付けないように養生した上で気をつけながら撤去し、キャリパー側にメッシュホースを取り付けます。
このときバンジョーボルトはそのまま流用、バンジョーアダプターの両端に入れるアルミワッシャーはノーマル時のものを流用します。そしてメッシュホース側を締め込みます。本来なら万力で挟んでやるべきなんでしょうけどね…
ここは締付トルクが指定されていますが、こんなもんどうやってトルク管理しろと。というわけで手ルクレンチで締め込みます。終わったらバンジョーボルトを外し、アルミワッシャーを新品に交換して本締めします。
キャリパー側も同様です。キャリパーを仮で装着したところに古いアルミワッシャーで挟んでバンジョーボルトでホースを装着、角度を決めてモリブデングリスを塗ったバンジョーアダプターを装着、締め込んでやります。終わったらバンジョーボルトを外してワッシャーを新品に交換して再締め込み。
フルード注入とエア抜き
ここから読み始める人は、キャリパーをフロントフォークに取り付け、ホースのバンジョーアダプター両端のアルミワッシャーを新品に取り替え、バンジョーボルトを締め込みます。トルク管理をしておきましょう。
まず、車体はセンタースタンドやレーシングスタンド等で直立させておきます。
フルード注入
ブレーキフルードは塗装を傷めますので、マスターシリンダーのリザーバータンクと車体を養生します。私は以下のようにキッチンペーパーやゴミ袋を駆使しています。
リザーバータンクの蓋を外し、フルードを適度に注ぎます。なみなみに注ぐとこぼれるので適度に。
そしてレバーを適度にゆっくり、握って戻すを繰り返してフルードを注入します。
注意点ですが、戻すときにタンクの底から気泡が出ます。これはラインから抜けてきたものですが、レバーの戻しが急すぎると気泡のせいでフルードが飛び散り車体に付着する可能性があります。繰り返してるとコツは掴めると思いますが、くれぐれも慎重に。
またフルードが減ってきたら補充します。フルードの残量はこまめに見て下さい。というのもフルードがない状態でレバーを握るとラインにエアを注入することになるので、フルードを抜いて最初からやり直しとなります。
このとき通常時と異なり、レバーはふにゃふにゃして奥まで握れると思いますが、感触を覚えておいて下さい。これがエアが噛んだ状態です。
これを繰り返し、重くなってきたり底付きが無くなってきたとと感じたら、次のフェーズに移ります。
エア抜き
まずキャリパーのブリーダーボルト側にメガネレンチを入れ、先端にエア抜きツールのホースと注射器を装着します。
ここからの手順は頭が混乱するところですが、理屈を考えれば分かるようになると思います。
- 注射器のピストンを引っ張って負圧にします。
- ブレーキレバーを握ります。握ったままにします。
- メガネレンチでブリーダーボルトを緩めます。握ったレバーが底付きしたら、負圧になったホースに気泡とフルードが吸い込まれますので、素早くブリーダーボルトを締めます。
- ブレーキレバーを戻します。
- リザーバータンクのフルードが少なくなっていたら追加します。
- 1に戻ってエアが出なくなるまで1〜5を繰り返します。
要するに注射器で負圧にしてレバーを握ってブリーダーを緩めると、キャリパー内のフルードとエアがいっしょに注射器側に吸い取られるわけです。こんな感じ。
何回もやっていると注射器にフルードがたまってきます。ある程度たまったらブリーザーを締め、注射器を少し引いてホースをゆっくり外し、フルードを缶に戻して再利用します。
というわけでエアが出なくなるまで上記を繰り返し、レバーも底付きしなくなり通常時と同じような感触になれば、エア抜きの完了です。
あとはブレーキをかけて前後に進まないか確認し、軽く試走して納得できればOKです。おかしいと思ったら再度エア抜きを試してみましょう。
なおダブルディスクの車両は、これを両側で行う必要があります。またGPZ400R(〜D3)やGPZ900R(〜A6)のように油圧アンチノーズダイブがある車両は、そのラインのエア抜きも必要です。
さらなるエア抜き
ER-5は特にそうなのですが、抜いたはずなのに完全に抜けていない感じがすることがあります。そういうときには
ブレーキレバーを奥まで握ってタイラップで縛って固定、数日放置
ということをやると改善される場合があります。
メッシュホースの効果
まずフルードをラインに注入するところからして違います。ER-5のノーマルホースでは気泡がなかなか出てこなくて、フルードが全く入っていきません。それに対してメッシュホースは、普通のバイクと同様に入っていきます。やっと普通になれました。
実走してみてもかなり変化しています。ずいぶんコントローラブルになりました。
元から効きが悪いブレーキなのですが、操作領域が広がったことにより奥まで握れるようになったせいか、ブレーキがずいぶん効きやすくなったようになったと錯覚するようになりました。実際には「効かせやすくなった」んだと思います。
また初期の領域も広くなったため、コーナリング中にフロントブレーキを生かせるようになりました。下手すると修正にも使えます。
このあたりの微調整感覚は、ノーマルだとゴムホースが膨張することで損失してたんだなという気がします。
まとめ
ブレーキは人の命を預かってる割には、その手間と面倒さから整備が端折られるところもあります。
ただキャリパーOHはたまに実施するとフィーリングもよくなりますので、ブレーキパッド交換ついでに実施するとよいのではないでしょうか。
またメッシュホース化も良好な結果となりました。予算が許すのであれば実施してみてはいかがでしょうか。