冬の北海道は、寒い。
しかし冬の北海道は魅力にあふれています。
問題は、移動手段です。
公共交通機関がある街を観光するのであればバスや鉄道でいいでしょうが、車でしか行けない場所も数多くあります。
そんなわけで北海道旅行ではレンタカーが便利ではありますが、如何せん季節は冬です。雪が積もってます。凍結してます。永久凍土もあります。雪道を車で走ったことがない人間には酷というか、不安しかないです。
しかし試される大地の雪道を走るのは、初心者とって本当に難しいのでしょうか?
そんなわけで雪道を初めて運転する2人が冬の北海道をレンタカーで走ってきましたが、無事に帰ってくることができました。
もちろんドライな道と比較すれば危険度は高まりますが、過度に心配する必要はありません。
皆様も是非、レンタカーで冬の北海道旅行を楽しんできて下さい。
今回の目的地
私事で恐縮ですが、2019年のしばれフェスティバルに参加することになりました。
北海道の内陸部にある陸別町は公共交通機関で行けなくもないです。女満別空港から北見に出て、さらに路線バスで陸別町に入ることになります。
ただ-20度以下の環境で過ごすことを考えると荷物が大量になるはずです。公共交通機関で移動するのは割と困難でしょう。
というわけで同行者と話し合った結果…
「エクスペリエンス最優先」ということで、新千歳空港でレンタカーを借りて陸別町まで行って往復することになりました。正気の沙汰じゃないよね…
レンタカーを借りる
レンタカー店を選ぶ
北海道には数多くのレンタカーがありますが、その中から選んだのは地場レンタカー屋であるホンダレンタリース北海道(ラベンダー店)です。

冬の北海道はオフシーズンなのでレンタカーがメチャクチャ安いのですが、こちらはスタッドレスタイヤ標準装備は当然のこと、(ハイシーズン限定の)S660を除いて全車種が4WD。それでもって他店より安い。なんと
車両(FIT) + 免責補償 + NOC補償 + JAF(レッカー距離無制限)
の2泊3日で14,100円でした。
4WDか2WDか
FITの4WDはリアルタイム4WD(フロントが滑ったときにリアにトラクションがかかる)なので、基本はFFではあります。ものすごく雑に言うとアテーサE-TSの逆。
とはいえ発進時や峠の上り坂では4つのタイヤにきちんと力がかかり、安定して前に進んでくれるので安心できます。またお尻を振ることもほとんどありません。雪道初心者が冬の北海道を走るのであれば、4WDが安心安全です。
ただ4WDは必須か?と言われると微妙なところです。例えばきちんと除雪されている幹線道路や、あまり雪が積もらない沿岸部であれば路面は普通に乾いています。目的地までの経路の大半がそういった場所であれば、2WDでも問題ないでしょう。ただ天候は急に変わる点に留意する必要があります。やっぱり4WDが安心ですかね。
レンタカーを受け取る
ホンダレンタリース北海道(ラベンダー店)の案内は、新千歳空港のレンタカー受付コーナーにあるホンダレンタカー北海道では受け付けてません。ラベンダーラッピングのマイクロバスに乗って店舗に向かいます。
これが今回のお車、FITです。
雪道が初めてと言えば走り方を教えてくれますし、不安なことがあれば質問しましょう。雪道運転指南の資料も渡してくれます。
また車両に載せている雪対策グッズも聞いておきましょう。今回は「雪下ろしブラシはあるけど解氷スプレーはない」とのことでしたので、念のため途中のホームセンターで購入しておきました。今回グッズを使うことは1回もありませんでしたが…
出発する前にまず目の前に広がる駐車場のアイスバーンを走らなければならないのですが、そこでおおよその感覚を掴んで北海道旅行のスタートです。
冬の北海道での運転のコツ
運転の心得
あらゆるWebサイトで言われていますが
- 急が付く動作は絶対にやらない(急発進、急加速、急ハンドル、急ブレーキ)
- スピードを出しすぎない
- 車間を十分にとる
- 周囲の地元車の動きや車間を参考にする
- 目の前の状況に対し即座に反応できるよう、正しい姿勢で運転する
これが全てだと思います。そして忠実に守れば、無事に生還できる確率は跳ね上がります。
スタッドレスタイヤはものすごく優秀です。自分の足で歩いたらズルッと滑るアイスバーンでも、ガチッと路面を掴んで走ってくれます。
ただ完全にはグリップしておらず、滑ってはいないけど薄皮を一枚噛ました感触の走りになります。上り坂の加速力も落ちます。やはり急加速は厳禁です。
カーブでうっかり四輪が滑っても、慌てずにアクセルもブレーキも踏まずに収束させましょう。
アイスバーンの上で急ブレーキを踏んで一旦滑り始めると、ABSは効くもののそのまま滑走します。前に車や歩行者がいたらアウト。そんな急ブレーキを避けるために必要なのは上記の2~5です。安全運転というより「余裕を持った運転」が重要といえます。
また北海道は線形がいいこともあり、うっかり速度がのりすぎることが多々あります。雪道でそれが出せるのは車とタイヤの性能がいいからであって、運転が上手いからではありません。スタッドレスだから、4WDだからといって調子に乗ると刺さりますので、自重が必要です。
冬でも割と飛ばす地元車も側道から出てくるときはものすごく慎重ですし、夜間の市街地では車間を取りながらかなり速度を落として走っていたりします。路面を見るとテラッ☆と光るモノがあったり(凍ってます)、ロードサイド店に出入りする車も多いので注意が必要です。北海道に限らず、こういうシチュエーションでは地元車の振る舞いを真似て走りましょう。
北海道の公道の特徴
都市部を除く一般道の大半は片側一車線で、制限速度の標識が絶滅危惧種と思えるくらい線形がいいです(要するに大半が60km/h制限)。長いところでは直線が5kmくらい続いたりするので、飽きとの戦いになることも。
峠道も今回走ったところは50km/h制限の中高速コーナーが多い感じです。
街も郊外も、歩行者はほとんどいないです。走ってる最中に歩行者を見かけたら「すげえ!歩行者が歩いてる!」と盛り上がるくらい。歩行者より牧場の牛や馬のほうが多いのは本当です。
歩行者だけでなく車も少ないので、全体的には走りやすい印象です。その分だけ路面に注意を向けることができます。
また街を離れると信号を見かけなくなります。といってもたまに出てくるので、不注意で信号を見逃さないようにしましょう。
今回は野生動物の飛び出しはありませんでしたが、注意が必要でしょう。シカ相手だと確実に負けます。
ちなみに私が車の中から見た野生動物は畑に向かって歩くキツネっぽいもの、相方が見たのは山手にいたエゾシカでした。野生ではないですが牧場で交尾してる牛もポイントが高かったです。
車が汚れる冬の北海道
北海道の公道でふと気付くことがあります。
走ってる車がとても汚い。
融雪剤もあるのでしょうが、かなりの土も混じっているようです。
他人の車が汚いのであれば自分の車も汚くなるはずで、例えばこれは約300km走行後のリアガラス。
これだけ汚れるわけですから、フロントガラスの汚れも半端ないです。
特に対向の大型車とすれ違うとこのあらゆるモノが混ざった雪水をかぶり、フロントガラスがあっさり汚れていきます。汚れが蓄積してきたら早めにウオッシャー+ワイパーをかけましょう。サボると汚れが落ちにくくなります。
なるほど、土地によってはセイコーマートで大五郎互換の酒と並んで寒冷地対応ウオッシャー液が売られてるのはそういうことなわけですね。ウオッシャー液が切れたら死ぬわ…
車を降りても危険は続く
駐車場等に車を停めて、降りるとき要注意です。
なぜなら、降りて足を着いたところがアイスバーンだったりするからです。酷いところですと駐車場全面がスケートリンクだったりします。そして簡単にズルッと滑ります(車でなく自分が)。
そう、自分が滑ってこそ理解できるのです。スタッドレスタイヤがいかに高性能かということを…しかしそのタイヤだって時には期待を裏切ることもあるのですから、過信せず安全運転でいきましょう。
その他の注意事項
車に雪が積もったら雪降ろしをしましょう。そのまま走ってブレーキをかけると、天井の雪がフロントに落ちて前が見えなくなります。
スキーに行く人はよくやると思いますが、車を夜通し駐車するときはワイパーを立てておいたほうがいいでしょう。凍り付き防止のためですが、でも地元車はあまり上げてなかったんだよなあ…恐らくですがワイパーブレードに付着した雪類が融けないので、凍り付くことがないのではなかろうかと。知らんけど。
スキーで思い出しましたが、目が弱い人はサングラスを持参したほうがいいでしょう。晴れてると雪による日光の照り返しが結構ツラいです。
そしてこれかなり重要かもしれませんが夜通し駐車する際は、車内に飲料水を置きっぱなしにしないようにしましょう。こうなります。
今回の旅路
1日目 (新千歳空港〜襟裳岬〜帯広)
バイク乗りは先っちょが好きなので、まずはナビの言いなりのまま襟裳岬を目指します。
空港を出て国道36号を走り道の駅 ウトナイ湖で休憩、日高自動車道(無料区間)を経由して国道235号をひたすら走るルートです。
道の駅 ウトナイ湖でホッキ貝チャウダーを頂きました。ホッキ貝もいい出汁が出るんですね…
日高自動車道を降りて最初に見かけたセイコマで軽く食事。山わさび鮭おにぎり美味かった。北海道ではセイコマがライフラインになります。
日高自動車道を出るまでは緩やかな丘ばかりで、自分が運転していて正直飽き始めてたのですが、交代して海沿いに来たらこのロケーションです。これは運転席側がお得。
見ての通り、路面はドライです。空港近辺を出て、襟裳岬直前までずっと。正直、肩すかしを食らった気分でした。そう、襟裳岬直前までは…
はい。襟裳岬直前です。すごく急に試される大地感が出てきました。こんな中で回線工事っぽいのやるなんて信じられない。お疲れ様です。
これでも気をつけてれば普通に走れちゃうからスゴいよなあ…とか言いながら襟裳岬に到着。このときはまだ、襟裳岬がどんな場所か知らなかったんですが…
寒いめう!風が強すぎて立ってられないめう!ヤバいめう!めう死んじゃうめう!
歩行もままならず立つのも困難。おそらく風速40m/秒近くは吹いてたんじゃないかと。ちなみに気温はたしか-6度。そんな冷たい風が容赦なく身体に吹き付けます。看板の撮影に失敗してるのはそういうこと。
そして車のドアを開いた瞬間飛んでいった、レンタカー屋謹製の雪道指南書よ、さらば…(あとで謝りました)
一番怖かったのは車に乗り込むときでした。風向きが変わってドアが開く方向に強風が吹き付けられ、全力で引っ張らないとドアがもげて飛ばされそうな状況。なんとか閉められましたが…早速JAFのお世話にならなくて済んだのは幸いでした。
気を取り直して帯広に向けて出発。
途中で見かけたフンベの滝。こういうのはレンタカー移動じゃないと見られないんですよね。
海沿いは雪やアイスバーンがありましたが、国道236号の内陸からに入ると少なくなります。しかし直線が多すぎます。最長のもので5km。このときのドライバーは私でしたが、
直線は、退屈だ。
という、スズキの某バイクのキャッチコピーを何回口にしただろうか…

そしてさらに長い直線(距離は数えてない)が続く帯広・広尾自動車道(無料区間)を経由して、帯広のホテルに到着。走行距離は300km。お疲れ様でした。
2日目 (帯広〜足寄町〜陸別町)
国道36号〜国道242号をひたすら走って陸別町を目指します。
ホテルの対面が六花亭本店だったので土産を買ったり、賞味期限2時間な雪こんチーズを食したり(濃厚で美味しかった)。
その他にも市内で肉を買ったり、帯広競馬場に立ち寄ってとかちつくちて言ってみたり。
走り始めると路面は凍り気味ですが普通に走れます。このあたりになると粉雪が路面の左から右に吹いて、白い帯状に見えるようになります。
しかしいいですよね。この澄み渡る空と、雪の大地。
アニメのタイトルみたいな名前の道の駅 ステラ★ほんべつに寄って滑り台を滑ったり。
道の駅 あしょろ銀河ホール21で松山千春の息吹を感じたり(出身地だそうです)。
足寄町で1回目の給油。385kmくらい走って22.0L、約17.5km/Lの燃費となりました。メチャクチャ燃費いいんだけど、信号がないからだろうな…
ここから陸別町に向かうとなぜか気温が高くなります。-2度とか本当に大丈夫か?と思いながら陸別町に入ったら、急に路面の凍り具合が酷くなってきました。そして会場到着。
ここをキャンプ地とする。
3日目 (陸別町〜足寄町〜清水町〜日高町〜夕張町〜新千歳空港)
最低気温-24度を記録したしばれフェスティバルも終了し、しばれた身体を共同浴場で温めたら出発です。
帰りは見ての通りヤバそうな峠越えのルートです。ナビが(一般道検索で)こういうルートを出したから仕方がない。ワシは悪くない。
足寄町から国道241号〜国道274号(ここがヤバい)を抜けるルート。
まあ本当にヤバけりゃ道東自動車道(50km/h制限がかかってたけど)に逃げられそうなので、このまま走ることにします。
途中で農道に誘導されたりして「直線は、退屈だ。」というルートばかりでしたが、清水町を越えたところから本格的な峠になってきます。
「そう!オレたちはこういうエキサイティングな道を待っていたんだ!」
と言いながら安全運転で道の駅 樹海ロード日高に到着。ここの蕎麦と天ぷらは美味かった!北海道は何でも美味くて安いな!
そして偽ヨーグルッペ。南九州民からするとこれは明らかな偽物ではありますが、冷蔵保存なだけあって爽やかでフレッシュな気がします。ぶっちゃけ本家よりおいし(それ以上いけない
で。峠道も日高町まではこんな感じで轍(わだち)もあり、割とイージーでした。
しかしここから先に進んだらごらんの有様ですよ…
これはユーロビートを流しながら走りたくなりますね(白目)。
まあ別に高速道路に逃げても構わないんですけど、ドライバー本人がやる気だったのでそのまま走り続けます。まあ雪道の素人がこんな道でも普通に走れてしまったんですから、最近の車とスタッドレスタイヤは本当にスゴいです。
しかし自分が走ると「直線は、退屈だ。」な道ばかりになるし、交代するとなぜかハードになるのが今回の旅路でした。普段の行いですかね。いや数kmの直線だって集中力の維持が大変なので拷問ではあるのですが。
途中、道の駅 夕張メロードに立ち寄ったら、中身はまんまAコープでした。なんでこれが道の駅に認定されてるんだ?
というわけで事故も何もなく無事、レンタカー屋に到着しました。
全走行距離700km、総燃費17.7。サイドシルに付着した雪が行程を物語ってますね…お疲れ様でした。
まとめ
雪道初心者が冬の北海道をレンタカーで旅行するのは、無謀なように見えて案外いけることが分かりました。ドライバーは複数人いたほうがいいですが…
北海道にはレンタカーでないと行けない、レンタカーでないと見られない場所、冬ならではの風景がたくさんあります。
航空機、宿、レンタカー全てが安い冬の北海道旅行、皆様もチャレンジしてはいかがでしょうか。見たことがないものが、見られるかもしれません。(↓2020年のしばれフェスティバル参加時に撮影)